会長挨拶

第9回日本臨床栄養代謝学会関越支部学術集会

会長 佐野 渉

上都賀総合病院 診療部長・救急センター部長
会長
今回、第9回の日本臨床栄養代謝学会関越支部学術集会を2022年12月18日(日曜)に開催させていただく運びとなりました。当初、栃木県宇都宮市で開催予定する予定でしたが、新型コロナ第8波の急速な感染拡大のため、急遽Web開催に変更しました。皆様におかれましては、日程の確保やご準備等いただいておりましたところ、直前でのお知らせとなり多大なご迷惑をお掛けいたしますこと、心よりお詫び申し上げます。また、直接交流の機会を提供できなくなってしまうことを深くお詫び申し上げます。
今回の学術集会のテーマは「主治医が望むNSTとは?」としました。自分が現在赴任している病院でNSTを開始したのが2001年であり、昨年で活動が21年に及びました。手探りでの開始となりましたが、まず始めに経口からの食事を止められている入院患者さんにおける輸液や経腸栄養からのカロリー投与量を集計してみました。そこでは1カ月以上の長期絶食患者さんへの投与カロリーが必要カロリーの約半分程度であったことが判明し、病院が栄養不良患者さんを発生させている場になっているとの認識を抱きました。以降は入院中に発生する栄養不良を減らすことに尽力しました。しかしながら輸液や経腸栄養、いずれも投与するためには必ず水分も体内に入ってしまうことになり、心不全患者さんや高齢患者さんの主治医は輸液負荷を嫌うために方針が合わないこともありました。言い換えると、入院の原因となった原疾患の治療と栄養管理、そのどちらを優先するかで試行錯誤した時期がありました。平成という時代の後半はチーム医療という概念が日本に押し寄せてきて、現在では多種多様なチーム活動が行われるようになり、医療の現場が劇的に変化しました。但し一点だけ変わらなかったことがあります。それは日本の医療における主治医制でした。チーム医療により導かれた提案は、責任の所在があいまいなため、様々な活動の責任を明確にしたいという古くから日本人が持つ習慣と相容れない部分がありました。責任の明確性、つまり主治医制は今後もゆるぎないものと捉え、「主治医の日々の診療に役立つチーム医療とは?」という考えに至りました。栄養学的に推薦される栄養療法を幾つか提示し、主治医が患者さんの治療経過や家族背景等を包括的に評価し、提示案の中で選択してもらうという考えです。これまではNSTがすべてを包括して主治医の代替となるよう提案していましたが、これからはあくまでも栄養療法の選択肢の提案に留め、主治医が最終的に諸々の因子を包括して判断するという考えです。ただし、栄養療法の提案といっても画一的な内容ではなく、主治医の経験や熟練度を考慮に入れた提案が必要となります。これらの点を踏まえて、主治医がチーム医療に何を求めているのかを再確認したいという思いに至りました。今回は主治医の立場に焦点をあてましたが、最終的には患者さんや、家族、他の医療スタッフの気持ちに立って考えることを原点として、実際の医療現場で役立つ知識や知見が得られる学術集会となるよう、関係者一同準備を進めました。演題は皆様方の御協力もあり58題集まりました。募集に苦労したのがシンポジウムのICU、HCUにおける早期経腸栄養法です。保険点数がついているにも関わらず普及していない現状が確認できました。重症患者さんの管理では例えエビデンスがあり病院の収益になろうとも、主治医が慣れないことに手を出したくないという気持ちは痛いほど理解できます。また、栄養管理で誤嚥性肺炎などを発症させたくないというNSTサイドの気持ちも理解できます。現在はあらかじめ説明してある合併症でも、いざ発生すると苦情を言われるのが常です。今回の発表者はその中でいかに工夫して導入したのか、得られる知見は大変貴重なものと考えています。今回の学術集会が、参加者や所属病院、ひいては一人一人の患者さんにとって何らかの益になれば本望です。
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