会長挨拶
第58回日本脊髄障害医学会 会長 美津島 隆 (獨協医科大学リハビリテーション科学講座) |
この度 2023年11月16日・17日の両日、埼玉県さいたま市にありますソニックシティにおいて第58回日本脊髄障害医学会を開催させていただきます。58回を数える伝統ある本学会の学会長を勤めさせていただけることは大変光栄なことであり、医局員、同門一同、学会員の皆様に深く感謝申し上げる次第です。
ご存知のように本学会は、リハビリテーション科、整形外科、脳神経外科、神経内科、泌尿器科などの医師、メディカルスタッフの方々が一堂に会して、脊髄疾患の全てについて議論できる学際的な学会です。そのため普段はあまり交流のない他の診療科の先生がたと交流を深める良い機会と考えます。
今回、私はこの学会にかける思いを「蛍窓雪案」というテーマに込めました。
蛍窓雪案とは、蛍を夜に数十匹つかまえて絹の袋に入れ、蛍の光で本を読んで勉強し、また冬の夜に窓辺に雪を積み上げて、雪の明かりで勉強し続けた、青年たちがのちに大出世したという中国の故事に由来するもので、苦難を乗り越えて、地道に勉強すればその努力は必ず報われるという意味です。
コロナ禍が世界を襲ってからはや4年近く経過しますが、いまだに各方面に負の影響を与えており、学問の場においてももちろん例外ではありません。この災禍により、何年進歩が遅れたか計り知れません。
しかしコロナ禍で、勉学の環境が悪化した今の時期に、地道に勉学に励んでいくことがいずれ、皆さんに大きな財産となって跳ね返ってくるのではないでしょうか。 こうした思いを込めて今回のテーマにいたしました。まさに「ピンチはチャンス」です。
今回の学会では脊髄損傷患者のリハビリテーション医療に大きく貢献されてきた田島文博先生並びに種市洋先生に特別講演を賜っております。きっと興味深いお話が聞けることでしょう。その他教育講演、シンポジウム、ランチョンセミナーさらに数多くの一般演題などを企画しており、様々な角度から、脊髄疾患についてup-to-dateな話題を提供しております。いずれも参加される皆さまのニーズに沿った内容と自負しております。
脊髄障害の分野は、ここ数年で、その治療が劇的に変わりつつある分野です。以前はその障害が半永久的に続くといわれ、合併症予防と残存機能の向上が治療の主眼でしたが、これからは元の状態に戻りうる疾患として光明が見えてきました。
また労働環境の変化やIT関連、AIなどにより働き方も変わってくることで、脊髄損傷者の社会参加面でも大きな変革が起こりつつあります。本学会がこれらの起爆剤になること祈念しています。ご参集の皆さんもこうした潮流をぜひ実感してみてください。