会長挨拶

第53回日本小児神経外科学会
会長 朴 永銖
(奈良県立医科大学 脳神経外科 兼 小児医療センター 病院教授)
会長
このたび、第53回日本小児神経外科学会を2025年6月6日(金)、7日(土)の二日間、奈良市の奈良春日野国際フォーラム 甍 ~I・RA・KA~にて開催させていただきます。奈良での開催は2005年の第33回(会長:榊 壽右 教授)以来、実に20年ぶりとなります。
この間の小児神経外科領域をとりまく環境は大きく変わりました。何よりもまず、日本の出生数の大幅な減少です。2023年の人口動態統計速報によりますと、本邦の出生数は75万8631人で8年連続の減少となり、2年連続で80万人台を割り込んでおります。小児神経外科の対象となる子供の数が今後とも減少し続ける現状があります。その一方で、特に小児脳腫瘍の分野では遺伝子診断やゲノム情報に基づく治療が急速に進み、神経内視鏡の登場により小児水頭症は髄液シャントを留置することなく治療が可能となっております。さらには、新生児医療の目覚ましい進歩によって超早産児の生存が可能となり、その結果として脳室内出血後水頭症の治療は大きな課題となっております。また、多くの重症例が長期生存可能となってきており、移行期医療にも積極的な関与が求められています。さらには、てんかんや脳性麻痺に伴う下肢痙縮などの機能外科の普及も重要な課題といえます。昨今、大きな社会問題となっている虐待による小児頭部外傷に対しても主体的に対応しなければなりません。
今回の学会のテーマを「責任ある均てん化を目指して、和をもって小児神経外科を成す」とさせていただきました。出生数が減少しても小児神経外科疾患がゼロになるわけではなく、一定数は必ず発生いたします。その際に、各地域の病院に勤める小児神経外科医が、標準的な治療を責任もって行わなければなりません。具体例を挙げますと、新生児水頭症例を髄液シャントを留置し、成人に至るまで合併症なく管理をすることは決して容易ではありませんし、シャント機能不全やシャント感染症が生じた際の適切な対応が求められます。その一方で、小児脳腫瘍などの希少疾患に対して最良の治療を行うためには、集約化を戦略的に行う必要があります。オールジャパンで、和をもって、一致協力して、同じ目標に向かって突き進まなければなりません。
弛まぬ努力と怯まぬ情熱をもって、病気に苦しむ子供たちの治療を行うことが、われわれ、小児神経外科医の責務と考えております。多くの仲間の皆様方と、小児疾患の特殊性のみでなく、移行期から成人期までを深く考慮した治療を行うことの重要性を、今一度一緒に考える機会となればこの上ない喜びと感じている次第です。
また、今回の学術集会では、韓国と台湾の小児神経外科学会の中心的な先生方をお招きして、日韓台での合同シンポジウム、さらには、韓国小児神経外科学会(KSPN)とのジョイントカンファレンスを開催いたしますので、多くの先生方と活発な交流を繰り広げていただければ幸いです。
6月の奈良は一年で最も良い季節です。学会場は奈良公園内に位置しておりますので、学会の合間には東大寺をはじめとする世界遺産に触れていただきまして、日頃の疲れを癒していただければと存じます。
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