ご挨拶
この度、日本精神保健看護学会第34回学術集会の大会長という、大変身に余るお役目を拝命いたしましたことを心より感謝申し上げます。それとともに、身の引きしまる思いを強く感じております。
昨今、私たちを取り巻く社会情勢は常に変化し、そのなかでメンタルヘルスに課題を抱える人々が増えています。この3年以上に渡る新型コロナウィルス感染症の蔓延による、私たちのメンタルヘルスへの影響ははかり知れないものがありました。精神疾患を抱える方は増え続け、自殺者も増加に転じ、精神障がい者への虐待問題も再びクローズアップされるなど、精神保健看護への課題は山積しています。
今、私たち看護職には、これらの課題にどう向き合い、取り組み、解決への行動を起こすかが問われています。その際、最も重視すべきことは、ケアを必要とする人々とのこれまでの関係性を俯瞰し、人々が自らの課題への方向性を見出し、人生における希望や生きがいを持てるような関係性の構築を、より一層大切にしていくことではないかと考えます。
認知療法・認知行動療法の創始者であるアーロン・ベックは、患者と治療者との関係性における協同的経験主義を重視しました。協同的経験主義とは、治療・ケアを必要とする人が積極的に治療・ケアに参与できるように働きかけ、それらの人々と共に、課題について考え行動し方向性を見出そうとするあり方です。両者は、対等で、互いをパートナーとして認めあう関係性にあり、この関係性が、治療・ケアを必要とする人のセルフヘルプを促進し課題を解決し、希望を実現に導くと考えました。まさにこのような時代に求められる関係性のあり方ではないかと思われます。
本学術集会のテーマに掲げた『共に考え、創り、積み上げる』とは、そのような関係性を具現化したものです。本学術集会を機に、多様な場におけるメンタルヘルスの課題を抱える人と、精神保健看護に携わる人が、共に、課題について考え、創造し、それらを積み上げるプロセスを、より一層発展できれば大変嬉しく思います。
本学術集会の開催場所は、千葉県成田市という、日本の空の玄関である成田国際空港と、開山して1080年以上の歴史を誇る成田山新勝寺に隣接する国際医療福祉大学成田キャンパスとなります。学術集会への参加はもちろんのこと、成田山新勝寺総門へと続く表参道を散策し江戸情緒を堪能したり、美味しいお食事を召し上がったりしながら、楽しい二日間を過ごしていただけると幸甚でございます。
皆様と成田の地にてお会いできますことを心より楽しみにしております。
日本精神保健看護学会第34回学術集会
会長 国際医療福祉大学成田看護学部 岡田佳詠