ご挨拶
第32回一般社団法人日本脊椎・脊髄神経手術手技学会学術集会
会長 原 政人
愛知医科大学病院脊椎脊髄センター、脳神経外科
会長 原 政人
愛知医科大学病院脊椎脊髄センター、脳神経外科
第32回一般社団法人日本脊椎・脊髄神経手術手技学会学術集会の会長を仰せつかりました愛知医科大学病院脊椎脊髄センターの原 政人でございます。前身の脊椎・脊髄神経手術手技研究会から参加させていただいております。この学会の名称には脊椎、脊髄以外に神経という言葉が入っており、非常に私の臨床スタイルに合っており馴染みやすかったことから参加させて頂くようになりました。私は脳神経外科医ですが、整形外科の先生方の忌憚ない意見をうかがうことができ、居心地の良さを感じることもでき、毎年欠かさず参加しています。
熊野理事長が掲げられたこの学会の理念は今なお色褪せず、この時代においてむしろより説得力を増しているように感じます。すなわち、1.個人主体の参加、2.整形外科と脳神経外科の集学、3.世界と同時進行、であります。これらの理念や学会名を念頭に置いた学術集会にすべく準備を進めさせていただきます。
さて、私たち脳神経外科医と整形外科医では初期教育が異なっています。運動器を扱う整形外科学、神経特に脳を扱う脳神経外科学との認識が世間一般にも浸透しているものと思います。しかし、脊椎は運動器であり、加齢とともに変性し、神経圧迫をきたして神経症状を呈することが多いものであり、運動器と神経両方の理解がなければ病態を理解できません。末梢神経も、繰り返しの動きによる周囲環境の経年変化ならびに神経自体の加齢変性により、神経が圧迫・牽引されて神経症状をきたします。神経は脳から脊髄、神経根、神経叢、末梢神経とつながっており、異なる部位に病変があってもよく似た症状を呈することがあります。しかも超高齢化の日本においては加齢による変性にて同時に異なる場所が圧迫されていることは珍しくはありません。私たちが末梢神経にまで守備範囲を広げているのは、高位診断が最も可能なのが脊椎・脊髄外科医であると考えており、多くの病態が手術にて改善させられるからであります。
今の社会は経済理論で動いている部分があること、患者の強い希望による術式選択を迫られることなど、必ずしも本当に正しい治療選択であるのかがわからなくなりつつあります。これからの時代、いろいろな手術手技を身に着けていくことは必要で、それを高める努力は必要です。しかしどの治療法が患者にとってより有益であるかの判断も絶えずしていかなくてはなりません。現時点では、顕微鏡はすべての病態に対して、安全かつ繊細に手術を遂行する手助けをしてくれます。現時点では、内視鏡や外視鏡がそのレベルに達しているかどうかは疑問です。今後の機器の発展と、術者の技量の向上などには時間がまだまだ必要です。
今回の学会では、脊椎・脊髄疾患のみならず末梢神経絞扼障害を含め、幅広く疾患を議論し学んでいただくとともに、多様性を考慮した手術手技を理解し、その本質を見極め、自身を高める機会となることを願っております。少しでもお役に立てるよう学会を運営させていただきます。名古屋の地で多くの先生方とお会いできることを楽しみにしております。